歯根膜炎は自然治癒しない? 痛みを伴う症状や治療方法・期間について

治療は終わったのになぜか歯が痛い

「噛(か)んだときにズキズキする」「治療は終わったのになぜか痛い」原因不明の歯痛に悩まされたことはありませんか? 歯の痛みは放置していてもなかなかよくならないものです。歯科医院を受診したいけれど怖い。歯科医院に行くと削られるのでは?と不安に感じる気持ち、とてもよくわかります。口腔(こうくう)内の異常は、自分では把握しにくいため、症状が出てからだと進行している恐れもあるのです。咀嚼(そしゃく)による痛みは、食事がスムーズに進まず、おいしさも半減してしまいますよね。

そこで今回は、歯の根周辺にある歯根膜の炎症についてです。歯根膜炎の原因や治療法などをご紹介しますので、受診時の参考にしてみてください。

  1. 歯根膜炎とは?
  2. 歯根膜炎の原因と種類について
  3. 歯根膜炎の治療法
  4. 歯根膜炎の予防方法
  5. 歯根膜炎に関するよくある質問

この記事を読むことで、今まで受診をためらっていた方も治療を始めるきっかけになり、我慢していた痛みから解放されるようになるでしょう。

1.歯根膜炎とは?

歯根膜炎とは?

歯の根を覆うようにあるのが、歯根膜と呼ばれる組織です。

1-1.歯根膜炎はどんな病気?

歯根膜が炎症を起こす原因はさまざまですが、歯周組織の構成にかかわる場所ゆえ、炎症が広がると歯を支える歯槽骨やセメント質にまでおよぶ恐れもあります。歯根膜炎には、感染性・非感染性の炎症があるので覚えておきましょう。

1-2.歯根膜炎の主な症状や痛みについて

歯根膜炎の症状や痛み方は、感染性と非感染性で異なります。下記を参考にしてみてください。

  • 感染性(叩くと響くように痛い・歯茎が腫れる・歯のぐらつき)
  • 非感染性(激痛を伴い、鈍痛を感じる・叩いたときの痛み)

虫歯と似たような痛みを感じますが、歯の浮遊感を抱くこともあります。知覚過敏のようにしみることもあるでしょう。歯痛を訴えて受診する方の多くは、非感染性歯根膜炎を発症していることがあるのです。

1-3.歯根膜炎の原因とメカニズムについて

歯根膜炎を引き起こす原因は、感染性と非感染性では異なります。それぞれの原因とどのように痛みが発生するのかを知っておきましょう。

1-3-1.感染性歯根膜炎の原因

歯の根管治療後、歯根膜を刺激して痛むことがあります。歯の神経まで治療器具が触れるためです。治療後の痛みなら、2〜3日で落ち着きます。虫歯による歯根膜炎も考えられ、歯根膜まで感染が拡大していることで起こるのです。穴が空(あ)いている虫歯・被(かぶ)せものの下が虫歯菌に侵されている・死んだ神経を持つ歯が細菌感染して炎症を起こす場合に、激しい痛みを感じるでしょう。

世界で最も患者数が多い歯周病は、進行して歯茎の腫れを伴う痛みを発症します。歯周病は自覚症状が出ずに進行するため、ご自身が歯周病だと知らずに放置し、歯根膜炎を引き起こすこともあるのです。

1-3-2.非感染性歯根膜炎の原因

非感染性歯根膜炎は、いわゆる噛(か)み合わせや咬合(こうごう)不全などによるものです。治療後に被(かぶ)せものをし、高さが適正ではないと、偏った力が歯に加わります。歯の一部に強い力がかかり、歯のぐらつきや炎症を起こすとされているのです。

知らず知らずに歯ぎしりや噛(か)み締めをしている方も要注意。噛(か)み合わせ同様に、歯への負荷が大きいため、ひび割れや歯茎に炎症を起こします。噛(か)んだときに痛むのはこれらが原因です。

1-4.歯根膜炎を放置するとどうなる?

歯根膜炎は、残念ながら自然治癒が難しい病態です。虫歯や歯周病による炎症なら、それらを治療しない限り、痛みが改善されることはありません。激しい痛みを止めるため、市販の痛み止めなど薬を使うこともあるでしょう。いったん、痛みが治まったとしても、放置して歯根膜の中にある歯槽骨まで浸潤してしまうこともあります。なるべく早めに治療を開始するようにしてください。

1-5.歯根膜炎になりやすいのはどんな人?

虫歯・歯周病にかかっている方や外傷を負っている方は、歯根膜炎のリスクが高まります。原因を取り除き、適切な治療を受けることが治癒への近道です。歯の痛みが治らないと悩んでいる方は、歯科医院へ相談しましょう。

歯根膜炎には感染性と非感染性があるんですね。
それぞれ症状や痛み方は異なります。どちらも自然治癒は難しいので、なるべく早めに治療を開始するようにしてください。

2.歯根膜炎の原因と種類について

歯根膜炎の原因

歯根膜炎には2つの種類があります。また、歯根膜に炎症を起こす原因も知り、予防にも意識を傾けてください。

2-1.急性歯根膜炎と慢性歯根膜炎

歯根膜炎の病態により、急性と慢性にわかれます。急性には、症状が比較的軽い急性単純性歯根膜炎と、感染症で起こる急性化膿(かのう)性歯根膜炎があるのです。後者は激しい痛みが特徴で、歯茎の腫れを伴います。ひとくくりに、根尖性歯周炎と呼ばれることがありますが、実際には歯槽骨やセメント質まで炎症を引き起こしているものを指しますので、注意してください。

歯根膜に炎症を起こしたまま放置し、痛みが長引くことがあります。長期間にわたり、口腔(こうくう)内に痛みや違和感を抱くようなら、慢性歯根膜炎になっていると捉(とら)えましょう。

2-2.虫歯

虫歯は、虫歯菌に感染して起こるもの。細菌感染が歯根膜まで広が、歯根膜に炎症を引き起こします。すでに穴の空(あ)いた状態や過去に治療した被(かぶ)せものの下が虫歯菌に侵されて発症するのです。虫歯に伴う歯根膜炎は、激しい痛みを伴い、麻酔も効きにくい症状だとされています。

2-3.歯周病

沈黙の病気とされる歯周病は、日本人の8割がかかっている病気です。患者数が多い反面、受診率が低い傾向があります。そのため、気づかずに症状が進行し、歯のぐらつきや歯が抜けるなどの症状で受診することが多いものです。歯周病も感染症の1つであり、歯根膜炎や歯槽骨を溶かすなど深刻な症状に発展することもあります。

2-4.細菌感染

歯根膜炎は、虫歯菌や歯周病菌による細菌感染が主な原因です。虫歯はひとたびかかると自然治癒せず、歯に穴を空(あ)けて浸潤していきます。歯周病も自覚症状がないため、症状が出るころには重症化するとされている病気です。必ず歯科医院を受診して治療を受け、再発防止と予防に努めましょう。

2-5.歯ぎしり

夜間に歯ぎしりをしていることはありませんか?一時的なものなら、傷んだ歯根膜の炎症も自然治癒します。しかし、長期にわたって続けている場合、歯根膜のダメージが大きいのです。そのため、強い負荷がかからないようマウスピースなどを装着し、緩和する方法を用いるのが一般的でしょう。

2-6.歯の損傷

ぶつけると、歯に外傷を負うことがあります。歯だけが損傷しているように見えますが、実は歯根膜に負荷がかかって痛むことがあるのです。外傷のレベルにより、歯の神経が死んでいることもあります。治療や痛みを緩和するためには、倒れた歯を元の位置に修復し、固定して安静な状態を維持することがポイントです。

2-7.矯正装置や義歯の刺激

本来口の中には存在しない、矯正装置や義歯は自分の歯や歯茎を刺激してしまうことがあります。虫歯治療時の被(かぶ)せものも同様です。金属部分が強くあたり、歯根膜まで炎症を引き起こして痛みを発症します。歯科医院を受診し、不具合の調整を行うのが第一選択肢です。

歯根膜炎になる原因は色々あるんですね。
これらの原因を知り、予防を意識することが大事です。

3.歯根膜炎の治療法

歯根膜炎の治療法

まずは正確な診断をし、治療計画を立てることが重要です。主な治療法や使用する薬などをご紹介します。

3-1.検査と診断について

歯科医院では、レントゲンで炎症部位の把握と問診・指診・打診などを行い、病態を明確にします。微弱電流を歯に流して行う電気診を行うこともあるでしょう。検査により、根管治療を要するかを判断する材料となるのです。

3-2.主な治療法

治療法は、感染性歯根膜炎か非感染性歯根膜炎かで変わります。あくまでも治療法の例として、下記を参考にしてみてください。

3-2-1.感染性歯根膜炎は感染根管治療が必要

虫歯菌や歯周病菌が原因となっている感染性歯根膜炎の場合、神経付近まで感染拡大することがあります。感染によって壊死(えし)した歯髄は取り除き、根管をきれいに消毒する処置を行うのが一般的です。治療に痛みを伴う場合は、麻酔を使うこともありますが、感染性歯根膜炎には効きにくいことがあります。

3-2-2.非感染性歯根膜炎は外科処置を伴う場合もある

歯茎が腫れて痛む・膿が溜(た)まっているなどが主な症状である非感染性歯根膜炎では、歯茎を切開後に膿を取り出す処置を行います。表面の膿だけを取り除いても改善しないケースが多いためです。重症の場合、外科処置を伴うことがあります。

3-2-3.歯ぎしり改善にはマウスピース療法

無意識に歯ぎしりをしている場合、就寝中にマウスピースを装着することで症状が軽くなります。マウスピースは歯科医院で歯型を取り、自分に合うものを使ってください。

3-2-4.根管治療後に発症したものは?

虫歯で抜歯した・根管治療を行ったなどの後に歯根膜炎を発症することがあります。歯の根が刺激を受けたために、痛みや腫れを伴うものです。一時的な痛みには薬で対処し、化膿(かのう)しているものは抗生物質で治療します。

3-2-5.歯周病の治療も同時に行う

歯周病は、歯のぐらつき・歯が抜けるといった症状を伴い、重症化したものは歯の土台ごと溶かしてしまいます。そのため、歯根膜炎だけの治療を行うのではなく、歯を再生して骨の修復を行うことが必要です。口腔(こうくう)内の細菌を減らして環境を改善するため、プラークや歯垢(しこう)を取り除くクリーニングを行います。歯周病治療は、定期的にクリーニングを受けることで良好な状態を維持できるのです。ひとたびきれいになったからといって受診を止めず、定期受診することをおすすめします。

3-3.抗生物質について

急性期の激しい痛みと腫れを鎮めるため、治療前に抗生物質と痛み止めの投与を行うことがあります。症状が治まり、落ち着いたところで膿を出して、感染根管治療開始となるのです。化膿(かのう)した部位には抗生物質が効果的で、炎症を鎮める効果も併せ持っています。

3-4.治療期間と費用について

治療期間は、症状や進行具合によって個人差があり、1〜2週間は見ておきましょう。重症の場合、6か月以上費やすこともあるので、念頭に置いてください。治療費は、保険診療なら1,500〜3,000円で済みますが、より専門的な医療が必要な場合は高額になることもあるでしょう。保険診療でも、衛生管理費は別途必要です。根管治療が必要な場合、精密かつ安全を考慮してマイクロスコープを用いた治療を行うことがあります。保険適用かどうかは、歯科医院へ確認しましょう。

3-5.歯根膜炎治療における注意点

歯根膜炎の治療では、感染根管治療を行う場合があります。治療は必ず最後まで継続して行いましょう。途中で治療を止めると、治療中の部位に再び細菌感染を起こす恐れがあります。歯科医院へ何度も足を運ぶのが面倒という方もいますが、かえって悪化してしまう危険もあるので、歯科医師の指示に従って治療を受けてください。

歯根膜炎は治療法も様々なんですね。
感染性歯根膜炎か非感染性歯根膜炎かで異なりますが、原因にあわせて適切な治療が必要となります。最後まで継続し、歯科医師の指示に従って治療を受けてください。

4.歯根膜炎の予防方法

歯根膜炎の予防方法

日常生活でのセルフケアで、歯根膜炎を起こさないポイントです。ご自身に合うケア方法は、歯科医院でもアドバイスを受けることができます。

4-1.歯ブラシと歯間ブラシを併用する

虫歯や歯周病は、歯と歯のすき間から起こりやすいものです。通常の歯磨きだけでは磨き残しが発生し、細菌が繁殖する原因となります。歯ブラシに加え、デンタルフロスまたは歯間ブラシを活用しましょう。

4-2.定期的なメンテナンスが効果的

歯科医院は敷居が高いと避けていませんか?何年も受診していないという方もいて、いつの間にか深刻な症状に発展していることもあります。激痛に耐えかねて、ようやく出向くという事例も少なくありません。症状の有無にかかわらず、定期的に受診してメンテナンスを行うことは重要です。クリーニングを行い、常に口腔(こうくう)内をきれいに保(たも)つことで、病気の発症リスクを軽減できます。加えて、病気の早期発見にもつながりますので、定期的な受診を心がけましょう。

4-3.マウスピースで負荷をかけない工夫を

歯ぎしりといった癖は、自分で何とかしようと思っても治らないことが多いものです。特に、睡眠時に起こる歯ぎしりは対処できませんので、歯科医院でマウスピースを作ってもらい、装着して過ごすようにしましょう。痛みを緩和し、噛(か)み締めも予防してくれます。頭痛持ちで悩んでいる方にも、マウスピース療法は効果的です。

4-4.歯周病はしっかり治療して再発しないようにする

歯周病が原因で歯根膜炎になっている方は、どちらもしっかり治療することが再発防止にもつながります。歯周病は甘く見て、重症になって歯を失うことになる深刻な病気です。歯周病菌に感染した歯から歯根膜へと炎症が広がり、歯槽骨も溶かしてしまいます。生涯、自分の歯で噛む喜びを感じたいなら、歯周病は根本から治療するようにしてください。

普通の歯磨きだけではダメなんですね。
ぜひデンタルフロスまたは歯間ブラシを活用してください。また、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けることで病気の発症リスクを軽減できるのでおすすめです。

5.歯根膜炎に関するよくある質問

歯根膜炎に関するQ&A

さまざまな要因で起こる歯根膜炎ですが、ご自身の症状と合わせて判断するのが難しいこともあります。受診するときに歯科医師に伝えやすいよう、メモなどを取っておくといいでしょう。

Q.副鼻腔炎と歯根膜炎の関連は?
A.鼻の粘膜が炎症を起こし、痛み・発熱・だるさなどを感じるのが副鼻腔炎です。副鼻腔は上顎に近く、歯根膜へと浸潤することがあります。歯根膜炎を起こす原因の1つとされており、抗生物質により治療が効果的です。抗生物質で炎症を鎮めることで、徐々に痛みが緩和してくるでしょう。

Q.矯正治療した歯が歯根膜炎になった
A.矯正治療をした歯にトラブルが起こることはあります。矯正治療の装置による刺激で、歯根膜炎になることもあるでしょう。しかし、矯正治療した歯が動き、噛(か)み合わせの異常が発生することが引き金になるのです。歯科医院へ相談し、噛(か)み合わせを調整する治療を受けましょう。

Q.歯根膜炎がなかなか治らない
A.ズキズキした歯の痛みから始まり、やがて激しく痛むようになるのが歯根膜炎です。痛み出したらすぐに治療開始するのが、早く治すポイントになります。なかなか治らないという悩みを持つ方は、痛み止めの薬と抗生物質だけでは改善しないはずです。根管治療ができる歯科医院を受診してください。

Q.歯根膜炎の応急処置が知りたい
A.痛みがあると我慢できないし、眠れないこともありますよね。歯や歯茎に刺激を与えると痛みますので、柔かい食事に切り替えて噛(か)まないようにしてみてください。
歯科医院受診日まで待てないという方は、痛み止めの薬を服用するか、夜間・休日診療所を利用しましょう。

Q.ラバーダムを使った治療とは?
A.感染性歯根膜炎の場合、根管治療が必要になることがあります。根管治療で注意しなければならないのは、患部にほかの細菌が入り込まないようにすること。ラバーダムは患部を囲むように保護し、無菌状態を維持する治療法です。根管治療の意味は、感染した部分から膿や細菌を取り除くことですので、ほかの細菌を防止することで別の病気を発症するリスクをなくします。

なるほど…これで歯根膜炎の疑問が色々とわかってスッキリしました!
日頃から口の健康に意識を向け、歯根膜炎を発症しないように生活習慣を改善してくださいね。

まとめ

普段から定期的な メンテナンスを行って病気の早期発見に 努めることも大切です

歯が痛い・歯茎が腫れたなどの悩みは、虫歯が原因と結びつけてしまうことが多いですよね。しかし、実際は、虫歯や歯周病の細菌感染により、歯根膜が炎症を起こしていることが考えられます。歯根膜炎は放置してもなかなか治らず、そのままでは悪化して歯槽骨まで浸潤して重症に陥ることもあるでしょう。いつまでも自分の歯を大切にするため、早めの受診で痛みを軽減し、症状を改善するようにしてください。普段から歯ブラシと歯間ブラシを併用して口腔(こうくう)内を衛生的に保(たも)ち、定期的なメンテナンスを行って病気の早期発見に努めることも大切です。いかに予防意識を持つかで、口の健康が決まります。自分の歯への関心を持ち、生活習慣の改善で発症しないよう生かしてください。

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